アフリカにも絶滅が心配されるペンギンがいる。南アフリカではほぼ毎日、 油まみれのペンギンが救助されている。海上でタンカーから不法投棄された油が原因。

−地雷・森林破壊・地球温暖化・ゴミ投棄・絶滅−

  南極大陸を取り囲む広大な海原、南極海。北はアフリカ、南アメリカ、オーストラリアの 各大陸南端までと続く。その冷たく荒れ狂う海域は人間の進入を拒み、今なお神秘のベールに 包まれている。

  一九七九年にオーストラリアで初めてペンギンに出会って以来、 ずっとペンギンを追いつづけてきた。南極海で進化してきたペンギンたち。 僕にとって南極海を巡る旅は、いつのまにか「病める地球」を知る旅となっていた。

  アフリカでは、船舶から不法投棄される石油で油まみれになったペンギンたちを、毎日目にした。
  ニュージーランドで出会ったペンギンは、住み家の森林を伐採され、牧場の境界線にわずかに残された 木立で寂しそうに立ちすくんでいた。さらに南米チリ沿岸でも、漁師の網にかかってたくさんのペンギンが 犠牲となっていた。
 南極はいまやいたるところ、ゴミだらけ。さらに「オゾンホール」と同様に 「地球の温暖化」が深刻な問題となっている。無菌室であったはずの南極が暖まり、新たな 病原菌がペンギンに感染しだした。日本などから大量に排出される炭酸ガスなどが、 巡りめぐって南極まで到着しているのだ。さらに、温暖化は地球規模の異常気象を誘発している。

  人類が「文明」という名でつくり出してしまった環境破壊。もはやその 影響は、秘境であるはずの南極海全域に及ぶ。
 絶滅の縁に立たされたペンギンたち。ペンギンも棲めなくなった地球に、 未来はあるのだろうか?

2000年5月
藤原 幸一


藤原幸一さん

写真家。ジャーナリスト。
NATURE's PLANET代表。

1955年秋田県生まれ。70年代後半、海の勉強に憧れ、オーストラリアに渡る。ニューサウス・ ウエールズ大学、ジェームズ・クック大学大学院で学び、グレート・バリア・リーフにあ るリザード・アイランド海洋研究所で研究生活を送る。 1988年より豪州にワークショップを置いて、南極、南極海の島々、アフリカ、南米を含めた 南半球を精力的に取材している。
著作および写真集に『ダーウィンの地球好奇心ブック』共著(小学館)、『ガラパゴス』『fine』 『イルカ物語』(データ・ハウス)、『Edge of the Ice』『Pure White World』(PIE BOOKS) などがある。

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また、このページでも、エルニーニョによる環境への被害が深刻なガラパゴスと、人間の残した 「ゴミ」だらけの南極のレポートが読めます。