第3回「ペンギンの宿 その2」

 滞在二日目の朝、天気が良かったのでカフェのテラスで朝ご飯を食べる。と、いうより他に食べられるとこがないわけで。コーヒーを飲みながらボケーっとしていると、ウエイターのお兄ちゃんが双眼鏡を持ってきてくれた。ファルス湾を眺めるが、朝はこれといって目立つものがない。もちろん海だけでも見る価値がある。運が良ければクジラも見えるらしい。
 ペンギン達は朝寝坊の宵っ張りらしく、午前中はあまり見かけない。ちょこちょこと姿を見せてくれる者もいる。あたりを歩く。国立公園の保護官のお兄ちゃんが、私を覚えてくれていた。昨日の私は、普通の観光客をやっていたと思うのだが。やはり、日本人だからか?声をかけられたので、お話する。ペンギンの話とか、日本の話とか。ツアーじゃ、これはできないからね。おかげで、その後は入場料なしで保護区に入ることができた。ありがとう!

 宿のインテリアも感激モノだが、生ペンギンはもっと感激。動いている姿はとーってもラブリー。もちろん、彼らは人間に愛嬌を振りまいているわけではない。目が合うと、まるで「あんた、誰〜?」と尋ねるがごとく、首をかしげてこちらを見る。やっぱり可愛い。
 その、可愛さに興奮さめやらぬ身。晩ご飯はやはりPenguin Point Cafeで。夜のカフェは、昼間よりもさらに感激モノ。ファルス湾(ボルダーズビーチの面している湾で、ケープ半島の東側に位置する)の夜景、かすかな潮の香りと波の音。夜景は神戸や横浜と違い地味だけど、小さな灯りが海岸沿いに点々と見える。そして、ペンギンの鳴き声が聞こえてくる。ここに泊まりにして良かった。
 部屋に戻ってからも、耳を澄ませば泣き声が聞こえてくる。これって、ペンギン好きでなければ公害かもしれないけど。と、その時やけに近い所から泣き声が。泊った部屋の窓の外は小さな庭で、木の茂みもある。

 窓を開けると……、そこには一羽のジャッカスペンギンが!茂みの中にもう一羽いる様子。懸命に鳴き声を上げている。これって、夜這いをかけていたのだろうか?このゲストハウスの魅力はここにもあった。
 しかし、その後、ゲストハウスのアルバムを見せてもらっていると、客室にまで入ってきたジャッカス君の写真が。写真のジャッカス君は、バスルームを歩いていました。さすがに、私の部屋までジャッカス君がくることはありませんでした。

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