第4回 「ビーチ」

  ボルダーズビーチでは、本当にペンギンと同じ海で泳げる。保護区は腰の高さくらいの金網のフェンスで囲われている。そして、目立たないがビーチへ入れる扉がついている。


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  日本人的常識をもって保護区に入った私は、最初、そんな夢のようなことができるなど、思ってもみなかったわけで、初日はビーチに入ることもなく、帰ってきてしまった。しかし、二日目、フェンスの扉の鍵をひょいと開けて中に入っていく男性が目にとまった。後ろめたそうな様子など全く無く、当たり前のように小道に入っていく。
  「えっ!入れるの?入っていいの」 それでも、日本人的常識が心によぎる。恐る恐る鍵に手をかけてみると、バネ式(っていうのかな?)で簡単に開けられる。何となく踏み固められたような小道が下り坂となって、つながっている。
  「犬・禁止。飲酒・禁止。必ず閉めること」 必ず閉めること、はペンギンが逃げ出さないようではなく、犬などの動物が外部から侵入しないように、ということだろう。じっさい、道端でもペンギン達は歩いているもの。 表示に従い、鍵がかかっていることを確認する。すでに、足元にはペンギン達がいっぱい。彼らを締め出してしまわないように(逃がさないように、ではなく)素早く入り、素早く閉めなければならない。小道を下る。あまりウキウキして早歩きになると、驚いてバタバタと逃げて行くペンギン達。あっ、ごめんなさい。そこからは、ゆーっくり静かに歩く。
 小道を下りきったところに、狭くて穏やかな波の砂浜がひろがっている。さほど多くない観光客がくつろいでいる横を、パタパタと歩き回るペンギン。しかし、なかなか近づいて来てはくれないんだなー。裸あり、水着あり、ウェットスーツありの子供達は海に入っている。何人かの大人も水着でくつろいでいる。中には、おじいちゃん、おばあちゃんも。10月の南アフリカはもうすぐ夏。水はまだ少し冷たいが、裸足になり水際を歩いてみる

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  海からは、数十羽ずつのペンギンが泳いでくる。陸に上がる間際のペンギンは平泳ぎ。嬉しくなって駆け寄ってしまうと、パタパタと逃げて行く。 「シーッ、静かに。驚かしちゃダメ」 白人のおばあさんに注意される。再び、ごめんなさい。これから行かれる方は、ご注意くださいな。
  小さい子供を3人抱えた若いお母さんがいた。子供二人はペンギンのありがたみもわからず、砂遊びをしている。一番下の子供はまだ赤ちゃんでハイハイしかできないが、それでもたくましく、あたりを動いている。その子にペンギンが接近。見ていて、ちょっと怖かった。ジャッカス君とその子の目の高さが同じなんだもの。
  と、人間達の思惑をよそに、ペンギン達が次々と海から上がってくる夕暮れのビーチなのでした。

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