第6回 「SANCCOB その1」

  西ケープ州ケープタウン。マグロ漁港と喜望峰で有名な街。 ジャッカスペンギン達の生息するボルダーズビーチはその南に。今回の大きな目的のひとつは、ペンギン保護のボランティアをすること。その場所である、南アフリカ鳥類保護施設・通称SANCCOB(サンコブと読みます)はその北にある。……という事実を、実は私は知らなかった。

  ボルダーズビーチ滞在2日目。
「よし、今日はSANCCOBへ行こう!」
 朝にちょっと降った雨もあがり、何ともすがすがしいお天気。カフェのテラスで気持ち良く朝食をとり、海のそばを歩く。今回の南ア旅行で初めてではないか?こんなに優雅な時間は。

 前日、保護区の出口を間違えた私に道を教えてくれた保護官のお兄ちゃんに声をかけられる。日本人ということで、覚えられていたようだ。
 10月はまだ観光ピークの手前で、それほど忙しくないらしい。少しばかりお話していく。
 「で、今日はどうするんだ?」
 「んーとねー、SANCCOBへ行って、ボランティアしたいの」

保護官のお兄ちゃん
「そりゃ、今日はもう無理だよ。明日にしないと。時間がない」
……ん?まだ10時前だし、大丈夫なんじゃないの?と思うが、英語で話していると、肯定は簡単なのに、反論は難しい。うまく言葉が出てこない。 「とにかく、行ってみる」とだけ答えて、観光案内へ。


サンコブグッズは、こんなの売ってます
 ボルダーズビーチゲストハウスの1階は土産物屋であり、観光案内も兼ねているのだが、観光案内の一角には誰もいない。客がというより、係員が。用がある人は、店員に声をかけてね、ってわけだ。で、声をかけてみたが、判ったことは結局、電話番号だけ。でも、SANCCOBグッズは売っている。
  「まず、電話してみれば?」
番号のメモを渡される。あ、ペンギンマークのマッチの裏側にメモしてくれている。ちょっと嬉しい。
  部屋から電話する。今から行って、何か仕事はあるか?と聞いたら、YESという答え。ゲストハウスのフロントでSANCCOBの場所を尋ねるが、誰も知らない。タクシーの運転手さんまで一緒になって地図を見る。このときまで私は、SANCCOBはボルダーズの近くにあるものと思いこんでいたわけだ。で、やっと見つけたその場所は、ケープタウンの北の海岸沿いにあった。時間にすると約1時間。代金にすると往復400ランド(約6000円)。

  南アのタクシーはメーター制ではなく、最初に値段を決めるシステム。運転手さん次第でお値段も違ってくる。席は助手席に座らせてくれる。おまけにガイドまでしてくれた。クジラウォッチングもできたし、案外おトクかも。

サンコブは、こんな所です
  そうして、道に迷いつつも何とかたどり着いたSANCCOBは、案外ショボい建物だった。